TDB-CE 東でもTOKYO DESIGNERS BLOCK

2003.8.5 | TEXT

 

D.U.M.B.O.外観 撮影:阿野太一/Daici Ano
D.U.M.B.O.外観
撮影:阿野太一/Daici Ano
D.U.M.B.O.ギャラリー 撮影:阿野太一/Daici Ano
D.U.M.B.O.ギャラリー
撮影:阿野太一/Daici Ano

先週末、青山周辺では東京デザイナーズブロック(以下、TDB)が行われた。4回目になるこ のイベントも、もう秋の風物詩のようになっている。「街全体をフィールドにする」というコンセプトが好きで、僕も毎年、何らかのかたちでこのイベントに参加している。

そして今年は、東京デザイナーズブロック・セントラルイースト(以下、TDB-CE)を行うことになった。そのイベントは、10月ではなく、一ヶ月遅れの11月7日~16日まで、日本橋や神田を中心としたエリアで行われる。

「なんだ、この長い名前は?」と言うなかれ。これはR-projectで僕がもっともやりたかったことだ。

昨年、R-bookの取材のときNYで印象的な街を見た。そこは「ダンボ」と呼ばれるマンハッタンブリッジのブルックリン側の足下、巨大な橋桁を目の前に望む一帯で、「ダンボ」とはD.U.M.B.O.「Down Under the Manhattan Bridge Overpass」の略である。すっかり寂れた街だったが、1997年、D.U.M.B.O.Art Festivalが開かれて以来、ここはNYでの新しいアートの震源地のひとつに数えられるようになっている。それに伴い、カフェやレジデンスができはじめコミュニティさえ形成され始めていた。

「こんなことを東京でやってみたい」

この街の変化の物語は、僕の記憶に、なにか決定的なインパクトを与えた。その後、東京に戻って日本橋一帯の状況に出会うのである。そのプロセスは、この日記のなかでたびたび書いている。

NYはアーティストの移動が新しいエリア開発に繋がっていくことが多い。古くはソーホーもチェルシーもそうだった。東京でもそれを起こしてみたい。その第一歩が、TDB-CEである。

こういうことは雑談の中から突然生まれるもので、ただ、その偶然は継続的な活動のなかでしか生まれない。TDB-CEもそうだった。それはアジールデザインの佐藤さんの、ふとした拍子に言った一言で始まった。もちろんその背景には、八丁堀を中心にした武藤くんたち(IDEE/R-project)やCNN(中央区ネイティブネット)の面々、神田でのテレデザインの活動、日本橋での僕らの動きが背景にある。TDB-CEは、それらの流れを合流させるに、うってつけの言葉だった。

ではTDB-CEって一体何なのか?

東京の東側に散在する空きビルが一週間だけギャラリーになる。それをオリエンテーリングのように見て回る。街全体がギャラリーとなるという点で、TDBのコンセプトを継承している。ただし、青山では街に溢れるおしゃれなアパレルショップやカフェなどに作品が展示されるが、TDB-CEの場合は、街に溢れる空きビルが展示空間となる。溢れてる空間の種類がまったく違う、そのコントラストがそのまま東京の西と東のギャップを象徴しているように思う。

そもそも空いたオフィスとギャラリーとして必要な空間はその性質が似ているんじゃないだろうか。ガランとしていて、なにもない。

観客はアートを見に来て物件に出会う。物件を見に来てアートに出会う。街にとってはどっちもハッピー。

というわけで、僕らスタッフは、今、ビルオーナーさんを説得している。

「一週間だけタダで貸して下さい。多くの人がアート作品と一緒に、あなたのビルを見に来ます。もしかすると、この空きビルを気に入って借りてくれる人も出るかもしれません。そもそも、アートというのは……、NYでは……、これから東京の東側は……」と。

アーティストにも協力を仰いでいる。彼らは、快く協力してくれる。合法的なスクウォッタリングだ。

キックオフイベントが行われた。会場は神田の路上。通りの一部にテーブルが並び、ビールとバーベキューがズラーっと置かれた。ビルの壁にはプロジェクターが照射され『ニューシネマパラダイス』を思わせた。アーティストやスタッフと地元の商店街の人たちの人口比はちょうど半分づつ。めずらしい光景であるのと同時に、なんだかとても懐かしい気がした。

たった三週間しかない。さて、どこまでやれるのか。勢いで始まったプロジェクトである。

今年は「このエリアでの、なにかの始まり」をうっすらと伝えることで精一杯かもしれない。しかしNYの「ダンボ」も、初年度はそんなもんだったと、ディレクターのジョン・グリデンは言っていた。それを信じて、まずは動き出す。

キックオフイベント
キックオフイベント
キックオフイベント
キックオフイベント

 

*こちらの記事はWEBマガジン「REAL TOKYO」に「TDB-CE 東でもTOKYO DESIGNERS BLOCK」というタイトルで掲載された記事です。

(文=馬場正尊)