はじめに
Chapter 1 これからの図書館を考える
Chapter 2 新しい図書館を旅する
Chapter 3 都市のような図書館をつくる
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Library as the City
都市のような図書館をつくる図書館を新たな視点で読み解き、まちに本のある場をつくるためのガイド。リンクの先で予約受付中です! ===== 編者:Open A、ひらく、図書館総合研究所 著者:馬場正尊、染谷拓郎、廣木響平、中島彩、河﨑帆高、竹内咲恵子、林泰地 編集:Open A、宮本裕美 デザイン:鈴木麻祐子 発行所:学芸出版社 =====
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Chapter2ARTICLE:
ジェイトエル十条駅前で起きる「創造のサイクル」、本とデジタル工房がつながる現場を訪ねる
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Chapter2ARTICLE:
Powell’s City of Booksポートランドの巨大書店から、まちと書店の関係、本の空間をさまよう体験価値について考える
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Chapter3ARTICLE:
ホーチミン市ブックストリートストリート全体が読書空間になり、年中催しを開催してまちを活気づける公共施策を紹介
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Chapter3ARTICLE:
&BOOKS京都市内3館を巡る「◯◯と本」からはじまる、新しい図書館体験の試みを追う
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Chapter3GALLERY:
那須塩原市図書館 みるる巨大本棚に展示台や居場所が点在する、本棚そのものが空間化した建築の内部をめぐる
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Chapter1
これから図書館はどうなっていくのだろうか。図書館や書店など、本のある空間に対しての再認識と、これからの姿の探求を始める。
デジタル化の進展に伴い、本とそれを取り巻く環境は大きな転換期を迎えている。かつて生活必需品であった紙の本は、出版不況や書店の減少とともに「嗜好品」としての側面を強め、装丁にこだわった高価な特装版が作られるなど、物体としての希少価値が高まっている。また、情報の鮮度や流通性を重視する「フロー型」の書店に対し、図書館は時間を超えて地域の知識や記憶などの文化を蓄積する「地域の知のストックの場」としての役割を担い、所有の概念が異なる両者は補完し合う存在となっている。
書店の数が減少する一方で、図書館の数は微増傾向にあり、その在り方は多ベクトル化している。かつての静かで閉鎖的なイメージから脱却し、カフェ等を併設して地域活性化に直結した「にぎわい型」をはじめ、他施設と一体化してシナジーを生む「融合型」、商業施設内で利便性を高める「テナント型」、特定の利用者層にターゲットを絞った「特化型」などへと進化を遂げてきた。実は書店も図書館と似た進化を遂げているのもおもしろいポイントだ。
近年では、制度の枠組みに縛られない民間主導の「本を軸にした新しい施設」や、行政自らが書店を運営する事例も登場しており、図書館と書店の境界は曖昧になりつつある。
物理的な本や、本に囲まれた空間が持つ独自の価値も再評価されている。スマートフォン等により人々の生活時間が細切れになる現代において、読書は一つのテーマにじっくり向き合い、「まとまりのある時間」を回復させる装置として機能する。また、圧倒的な「本の密度」による好奇心の刺激や没入感に加え、本が放つインクのにおい、空間の音を吸収することで生まれる穏やかな静けさなど、五感に深く働きかける空間体験は、デジタルでは代替できないリアルな場ならではの大きな魅力だ。
これからの図書館は、単なる情報提供施設や本の貸出機関にはとどまらない。最新のデジタル技術を取り入れたスキル育成、生涯学習の支援、多言語・異文化交流、コワーキングスペースとしての活用、さらには高齢者等への心理的サポートなど、多機能な地域コミュニティの中核へと発展していくだろう。人々の多様なニーズにワンストップで応える社会的インフラとなり、動的な社会的空間として地域の核を形成する「都市のような図書館」へと進化していくはずだ。
COLUMN:
これからの図書館を考える紙の本の価値と五感に働きかける空間から、本のある場について問い直す
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Chapter2VIDEO:
ボローニャ市立図書館映像で巡る、旧証券取引所を再生した「屋根のある広場」の空間と賑わい
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Chapter3ARTICLE:
シビックプライドプレイス市民と協働で街の日常を観光資源に編み変える、参加型アーカイブの試みを解く
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Chapter2
ここで示す20のステップは、天童市立図書館をはじめ、OpenAが公共図書館を計画・整備する際に取り組んでいること、実現へのプロセスである。
地域によって事情はさまざま。同じ方法はひとつとしてないと思うが、それでも試行錯誤や行動のヒントになればうれしい。都市のような図書館をつくる 20のステップ
1:地域の課題やポテンシャルのリサーチ
都市の中での図書館の位置付けを考える。その地域ならではの資源を活かしながら新たな価値を生んでいく図書館にするため、地域が抱える課題と、地域が保有する既存の施設や教育機関などのリソースの把握、産業や資源、コミュニティ、歴史や文化などのポテンシャルをリサーチする。
2:市の政策の中での位置付けを考える
行政の中で、まずは教育、健康・福祉、産業、文化などそれぞれの関連部署が管轄する政策を整理する。バラバラに取り組んできた課題をいかに図書館をハブとして共有し、強みをつなげていくか検討する。
3:ステートメントを描く
図書館の役割を整理し、基本理念(ステートメント)をつくる。その理念を実現させるための機能とサービスにまつわる指針もつくる。
4:行政のチームを考える
教育委員会に縛られず、都市政策や公民連携、産業や経済にまつわる課、およびそうした経験や知識のある行政職員でチームを組成する。
5:立地を考える、決める
市民や地元組織、教育や福祉に関わる団体、企業などとのコンセンサス(合意形成)、行政の負担等の経済性など、 複数の側面からの検討が不可欠になる。各候補地にメリット・デメリットがある中でバランスのとれた総合的な判断が必要。
既存の市有地を使うか新規で購入するかなどの経済性、アクセスの利便性、面積規模、観光との連携、賃貸スペースからの収益性、大学など教育施設との連携、コンセプトと立地の相性など、複数の要素から検討する。リノベーションの場合は、廃校活用や閉業したデパートや商業施設の活用など、あらゆるローケーションが考えられる。6:イベントでプロセスを公開する
図書館の構想段階から市民の参画を促し、新しい図書館のイメージを市民と共有することを目的とした公開型ミーティングを開催する。図書館をはじめとする専門家を招いた基調講演やディスカッションの場を設け、市民と共につくる新しい公共空間の重要な役割を果たす場となる。
市民や地元企業が図書館でやりたいことを公開企画会議のようなかたちでプレゼンする。公開型として市民に見せることで、新たな図書館像がイメージしやすくなり、当事者意識を醸成させる。
天童市立図書館のプロジェクトで実践した、プロセスを公開し、市民を巻き込む「デザイン会議」 7:検討チームをオーガナイズ
上記の公開型イベントと同時進行で基本計画策定委員会を開催する。セミオープンのかたちで、コアメンバーとして専門家が集まり話し合いを重ねる。この内容をイベントで拡散し、社会化していくことを繰り返し、市民から共感を得られるようになっていく。自治会など地域に絡む専門家を集める。地域の人々など、将来具体的にコミットしたい人を呼ぶ(場合によっては図書館のプロなどの専門家も含める)
8:運営主体を顕在化する、企業を巻き込む
活動主体、投資主体双方の地元プレイヤーを発掘する。地元産業や大学、商店街、NPO、市民団体など様々な街のプレイヤーとの連携が考えられる。公共の場だからこそ、活動主体が今後の施設運営の一部を担い、また収益を生んで賑わいを創出する機能は、地元資本による施設整備を可能とする。
9:司書の役割を拡張する
新たな司書の役割として、リファレンスだけでなく、人と人、人とまちを繋ぐコミュニケーターであることがあげられる。
専門性の高い司書・職員を育成するため、知識や技能を拡充することを目的とし、近隣の公共図書館と連携した研修会等を開催することによって、質の高い図書サービスの提供及び 向上を目指す。また、自己研鑽を推奨し、各種研修等への自発的な参加を支援する。10:図書館のサービスメニュー、動線を考える
貸出やレファレンスなど従来型の図書サービスに加えて、時代の方向性やまちの将来像を見据えた時代の変化に対応する蔵書構成を心がける。ビジネス支援、商用データベース、蔵書管理システム、郷土資料の活用・運用、デジタル・アーカイブ整備、市民の知的活動等による資料のアーカイブ、学校図書館との連携なども検討する。
11:どんな機能を複合するか考える、基本機能からの拡張(カフェ、シェアオフィスなど)
公開型イベントやアンケートでの意見を基に、子どもから高齢者まで利用者のライフステージに応じた活動や必要な情報へのアクセスについて検討。それを実現するために図書館がどのような支援ができるかを検討し、具体的な機能に落とし込んでいく。図書館機能と連携することで相乗効果を生む機能、また図書館で提供するサービスをさらに拡充する機能を想定する。
12:公民連携の手法を検討する
適切な公民連携手法を取り入れる。可能な限り民間に門戸を開き、行政が担うべき役割を吟味することで施設整備の負担を削減することができる。
13:発注方法を考える
既存の発注方式のしばりについて、問題提起する。
一般的に公民連携では、複数の業務を包含した複数年度での委託(包括発注)や、 アウトプットに着目して民間事業者が果たすべき義務を規定した委託(性能発注)等 により、民間事業者の創意工夫を引き出し、コスト削減やサービスの質の向上が期待される。
民間事業者が分担する場合においても公共の精神、公共の責任を持っていることが求められ、民間が行う業務範囲や費用負担方法の違いによりいくつかの事業手法が想定される。
想定される事業手法としては、①設計・運営連携方式、②設計・建設 一括方式、③DBO方式、④BTO方式などがある。14:規模や空間を検討する
地元からの事業アイデア、図書館の必要面積、今後の維持運営に係る総コストを考慮し、関連法規を踏まえた建物の適正ボリュームを検討する。法令や条例各種にも適応させていく。
15:街とのつながり方を考える
街中に小さな図書館を点在させるなど、周辺施設や街全体を図書館の延長上と考える。周辺施設と連携しやすい建築デザインやサービス、企画を検討する。
16:社会実験を行う、試してみる
イベントで議論を重ねたアイディアを実証実験していく。さらにイベントで構築した人材ネットワークが、行政とともにまちの賑わいや課題解決につながる事業の中核を牽引する主体となる。 その地元プレイヤーとともに、図書館で実装したい公⺠連携プログラムを試行実施していく。

別府市新図書館の構想関連業務で実践したリモートライブラリー 17:インクルーシブデザインを考える
従来ではデザインプロセスから除外されてきた多様な人々を巻き込む建築デザイン。物理的な障害だけではなく、言語的排除、経済的排除、コミュニケーションにおける排除など、あらゆる課題を想定して導線やサービスを検討する。
18:市民活動との連携
イベントを通して、図書館運営に主体的に関わる機運醸成が図られて、 参画の仕組みができつつある。市民ニーズに応える上においても、今後の図書館運営において、図書館サポート組織(図書館フレンズ、友の会など)の設立や運営への参加を勧める。
おはなし会など子どもたちの読書推進活動への協力、イベントの共同企画・運営、蔵書の維持や保全に関わる活動、除籍資料の販売会など、様々な活動を通して、すでに活動をしている人と人をつなぐことも必要である。
また、その他の市民活動や子育て支援活動など、市民のコミュニティ支援をサポートすることも 新図書館の重要な役割の一つであり、市民活動の場の提供、団体の紹介や広報、マッチング、イベント等での連携など、市民活動参加へのきっかけづくりの拠点となるように努める。19:サービスのデジタル化を検討
電子図書館サービスの導入やオンラインサービスへの取り組み。急速なデジタル化やリモート化に対応するために、デジタルツールやデータベースを使って情報を得る方法やそれを加工(編集)して活用する方法についても、図書館から発信する。
小・中学校や大学など教育機関をはじめとする蔵書管理システムと連携し、資料の共有やネットワーク構築を段階的に進める。リアルとリモートの最適化を図り、利用したくなる動機付けや利用しやすい環境を整備する。20:デジタルアーカイブの検討
所蔵資料や地域の文献をデジタルデータ化し、データベースをつくる。
デジタルアーカイブのメリットには、以下がある。・資料の劣化防止
・資料の加工、編集が容易になる
・多くのユーザーに資料を提供できる
・さまざまな角度から資料を検索できるCOLUMN:
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Chapter3
■本は人と実空間をつなげる媒体
図書館的機能が建物の中に収まっているだけでなく、街中に拡がっていれば。そんなイメージを既に実現した街がある。長野県小布施町の「まちじゅう図書館」。2012年に始まった取り組みで、街のあちこちに小さな本棚を点在させることで、町全体を図書館にするというプロジェクトだ。
店先や蔵、自宅の玄関口の余った空間に自分の好きな本を置いておく。街を歩く人がそれに響けば、そこからコミュニケーションが始まることだってある。本のある店や家のネットワークは地図にまとめられ、住民も観光客もそれを片手に街を巡っていく。
本という物体が、図書館と街の小さな場所を具体的につないでいる。
ウェブサイトであればリンクを張る、ということに置き換わるのだろう。それは確かに便利だが、関係性はデジタルで空間的なつながりではない。
わざわざ本棚を置き、本をセレクトするといった少々面倒なプロセスを踏むことにより、図書館とその他の場所との実空間的なつながりを生んでいる。
こうやって街の至るところに本棚があり、人々がそれを意識することができれば、バラバラだった街の機能が、まるで本として編集されるかのようにまとまって見えてくる。
それは、図書館がきっかけの、本が媒体となったまちづくりのようでもある。
■屋台の図書館が、街に出没
OpenAが別府市新図書館の基本計画段階で実施した「モバイルライブラリー」は、屋台のような小さな移動図書館。実験期間中、市役所や駅、ショッピングセンターなどに出没させた。
目的は、図書館が新しくなることの告知や、図書館の存在を市民に身近に感じてもらうことだった。
見慣れた街の風景の中に本の屋台が置かれ、小さな違和感がフックとなり、ちょっと立ち寄って本を眺める人々の姿が見られた。意外な場所での、意外な本との出会いを演出する小さな装置である。
ちょっとした工夫で、図書館的要素を街に散らばらせ、市民の日常の中に溶け込ませる。
※写真(別府の屋台図書館)
そもそも日本には移動図書館があり、本をたっぷり積んだ車が図書館本体から遠い地域や学校を定期的に訪れていた。人々がそれを心待ちにし、やってきた時には周りが華やいだ。現在でも一部の地域では実施されているが、車両を移動させたり、図書館を新たに整備したり、維持し続けるための予算や人員の配置は難しくなっていると聞く。
だとするならば、その分身のような屋台の図書館が、街のさまざまなところに散らばっている。その場所に関わる人々が、図書館と連携しながらコンテンツを考えたり、本をチョイスしたりする。自立分散型のネットワークを、図書館的機能がつないでいく。
■台湾式・散らばる図書館
台湾でも、都市に散らばる図書館が体系的に展開されている。この本で紹介した「知恵図書館」は、無人運営型の小さな公共図書館。本をRFIDタグで管理することでセルフサービス方式をとり、台北市の中心市街地にある駅や空港、公園などの公共空間に設置されている。
駅の通路ではジュークボックスのような図書館マシンを見かけることがある。本の貸出や予約本の受け取り、予約の受け付けなどの機能があり、知恵図書館をさらにコンパクトにした無人図書館だ。このように駅や移動の結節点に、機能的でアイコン的な本のプラットフォームがあることもおもしろい現象だ。

知恵図書館 ■本が場のアイコンに
台湾といえば、図書館ではないが、市民にとっての文化の中心地でもあり、もはや観光地にすらなっている誠品書店がある。本のアイコン性を存分に使い、本屋を新しいタイプの商業空間へと昇華させた。旅や観光の書棚の周辺に旅行関連のショップが並び、ファッション雑誌の周りにアパレルショップ、絵本の棚のそばには、おもちゃなどの子ども商品が配置されている。
本を眺めて、気分が盛り上がったところで、その横に購入の場がある。消費心理をダイレクトに空間化した構成は、本という物体の不思議な魅力を最大限に引き出しているように見える。誠品書店は本屋の複合化の可能性を拓いたのと同時に、本が周辺環境のアイコンとして有効性を示した。
■書店3.0へ
雑誌や週刊誌などを中心に情報を販売する従来のビジネスモデルを書店1.0とする。そして、多商材化・多機能化した誠品書店を書店2.0とするならば、その次なる書店3.0は独立系書店といえるだろう。台北市の中心地にはユニークな独立系書店が街に点在しているのを見かける。日本でも都市部を中心に、独立系書店が静かに熱く盛り上がりをみせている。
店主のキャラクターや価値観が反映された品揃えや店づくりが特徴で、特定のジャンルに特化していたり、ちょっとマニアックなセレクションが楽しめたりする。本の販売だけでなく、読書会やトークイベント、ワークショップを開催するなど、文化発信やコミュニティを育む役割もある。デジタル化されて今やどこでも本が読める時代なのにもかかわらず、なぜ人間は本という存在に惹かれてしまうのだろうか。都市に小さな書店が散らばるという現象は、そんな人間の不思議な性(さが)を象徴的に表しているのかもしれない。
COLUMN:
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