福山の住宅 -西棟-

福山の住宅 -西棟-

時期:2020.8〜2023.5

所在地:広島県福山市

クライアント:個人

規模:木造、地上2階、延床面積 184㎡

用途:住宅

CM:株式会社アー・ヴェー・ツェーム

設計/監理:馬場正尊+平岩祐季+土屋柚貴+瀧下まり+小川理玖/OpenA

インテリア監修/FFE選定:阪田恵美

撮影:楠瀬友将 /有限会社フォワード

築40年を迎えた木造住宅の改修計画。
上質な仕上げや大工の手仕事が丁寧に残されており、できるだけ既存建物を生かした計画を行いたいと考えた。「残すもの」「残さないもの」を慎重に選択しながら次の世代へと引き継ぐことのできる新たな住まいを目指した。

1階は、分断されていた2部屋の間仕切りを撤去し、南北に抜ける大きなリビングダイニングをつくった。陽だまりと南北の風抜けの両方を活かした心地のよい居場所となっている。間仕切りと共に柱を一部撤去したことで、既存廊下上部には鉄骨梁の補強を設けている。
既存の浮造りの無垢杉板の竿縁天井は、一度、大工の手によって一枚一枚取り外され、新たなリビングの天井部に設え直されている。既存天井を活かす一方、壁材に光を柔らかく反射するイタリア漆喰、造作家具や内部建具はカラーガラスで設えるなど、新古の材料を組み合わせ、屋外と緩やかにつながる1階部分に大らかな空気をつくることを心がけた。

庭に面したリビングは、新たに設けた建具を開け放つことで、屋内と屋外が緩やかにつながる構成とした。隣う合う東棟とはデッキや庭を共有しており、家族の日々の暮らしや、友人たちとの集いが屋内外を横断して広がる空間となっている。

2階にも木賊張り天井や無垢の竿縁天井など、堅実な手仕事によって残された仕上げが多くあった。2階部分は内装建具も含めほぼ全てを既存を活かした計画とした。階段部は既存のささら桁に合わせ、新規の踏板と蹴込板を一枚ずつ微調整しはめ込んでいる。これらは設計者の机上の判断だけではなく、現場実測と調査を行いながら打合せを重ね、大工の丁寧な手仕事により実現している。

外観は、既存の軒組や屋根がつくる佇まいを生かしつつ、隣り合う東棟とトーンを揃えた新しい左官仕上げの外壁とした。新旧の違いを明確にしながらも、2棟が並ぶ敷地全体のバランスを整えている。

玄関部分は、既存玄関をキッチンパントリーへ、既存玄関ホールを玄関土間へと更新することで、客人を迎える外構アプローチを広く確保し、さらにバリアフリーな動線を実現した。新規の鎖樋と、従前の庭石を加工した手水鉢を合わせて、軒裏の垂木天井と一体となった「家の顔」としての佇まいをつくっている。

長い時間をかけて受け継がれてきた建物と暮らしと技術に、現在の生活を重ねながら、これから先も世代を超えて住み継がれていってほしいと願っている。(土屋 柚貴/Open A)

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