こすぎコアパーク
こすぎコアパーク
時期:2019.4-2021.10
所在地:武蔵小杉駅南口駅前広場
クライアント:東急株式会社
規模:広場:1100㎡ 木造店舗:38㎡
用途:広場・店舗
設計/監理:馬場正尊+市江龍之介+塩津友理+竹川康平/OpenA
構造設計:長坂建築工舎
電気・機械設備設計:近代設備設計、VI・サインデザイン:UMA/design farm
撮影:楠瀬友将
都市公園リノベーション協定制度
一般的に多くの駅前広場はロータリーとして機能しており、人のためではなく、車のための場所となっている。都市計画としても道路に該当していることが多く、滞在空間を設けることも容易ではない。
武蔵小杉エリアは近年再開発が進み、多くのタワーマンションや大型商業施設、公開空地によってまちが作り替えられてきた。
こすぎコアパークは、2014年の再開発により生まれた都市公園であり、武蔵小杉駅南口駅前広場として再開発前から残る商店街と東急武蔵小杉駅との境界に位置する。
2021年の川崎市と東急株式会社の共同事業となる今回のプロジェクトは、駅前の回遊性や滞在性を向上させる公開空地のリノベーションである。2021年3月に東急と川崎市は、都市再生特別措置法に基づく「まちなかウォーカブル区域」の特例制度「都市公園リノベーション協定」を締結し、20年間の設置管理協定のもと、連携して広場のリノベーションに取り組むこととなった。オープン・エーでは、全体計画と北側の木造店舗・広場の設計監理を担当した。
地域関係者へのヒアリングや周辺環境リサーチを行うなかで、以下の方針を定めた。
・フェンスと生垣を撤去し、駅と駅前を連続させる
・広場中央に盆踊りスペースを確保し、地域のイベント活動を維持する
・木陰をつくる樹木や待ち合わせ場所となるようなベンチを配置する
・建蔽率の緩和を活用し、広場の滞在性を向上させる飲食店舗を計画する
三角形と多角形
こすぎコアパークは、南北軸のグリッド街区を斜めにクロスする線路によって生まれた三角形のヘタ地のような形状である。そこで、建物もベンチも植栽桝もすべて多角形の形状とすることとした。道路や高架橋、建物、ベンチ同士がすべて正対せず、一つひとつの場所が独立しつつも隣接する関係性が生まれることで、多様な過ごし方を許容できるのではないかと考えたからである。
具体的には、広場の南北にそれぞれ建物を配置し、広場の形状を高架橋や周辺建物に囲われるようにした。
南の鉄骨棟は、広場を受け止める北側テラスと高架下通路と道路による鋭角なY字路のランドマークとなる建物である。
北の木造棟は、コアパークと隣接する再開発空地の軸線に直行する配置のキオスクのような建物である。建物をえぐるように軒下空間をつくり、道路に向かって植栽ベンチを飛び出させた。準耐火構造(ロ-1)としたことで、木架構現しの屋根下にコアパークから複合施設「Kosugi 3rd Avenue」に抜ける開口をうがち、建物から道路の境目に向けて植栽やベンチを配置した。既存のピンク味の入ったインターロッキング舗装との調和を考え、レンガやレンガタイル、骨材の入った吹付塗装などを仕上げ材に選定した。
広場の計画では、ベンチとベンチ状の植栽桝を群生させることで、植物の間をすり抜けたり木陰に隠れたりと利用者の動きに合わせてさまざまな場所が生まれるようにした。一本づつ植わる樹木には、「むさしこすぎ」の頭文字をもつ樹種を選定し、広場全体を『こすぎ植物園』と見立て、小さな樹名板を取り付けている。
周りのタワーマンションからも見える広場中央には、大きな床面ロゴサインを入れた。盆踊りの櫓スペースを確保すると共に、広場の人の流れを可視化している。
通勤通学で通り過ぎる人、待ち合わせをする人、食事をする人、散歩をする人、目的もなく佇む人…。こすぎコアパークがさまざまな人が交差する駅前広場として、まちの歩みと共に育っていくことを期待している。(市江龍之介/OpenA)