UPLIFT SHIMOJYUKU/嬉野温泉駅前の複合施設

1期工事終了後、広場と建物を一体的に使って開催された嬉野温泉駅開業イベントの様子。

UPLIFT SHIMOJYUKU/嬉野温泉駅前の複合施設

時期:一期工事/2021.10~2022.09、二期工事/2023.01~2024.03

所在地:佐賀県嬉野市嬉野町

クライアント:まちづくり嬉野、MILKBREW COFFEE

規模:225㎡

用途:カフェ&ラボ

建築計画:馬場正尊+小倉畑昂祐/Open A 、ケース・リアル

全体監修:中島大貴/ナカシマファーム 内装計画:二俣公一+下平康一+久保山実暉/ケース・リアル 施工:唐津土建 

照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基 グラフィック:UMA / design farm ショップ監修:吉岡由実加(一期工事)

撮影:楠瀬友将

計画地は、新幹線の延伸に伴い佐賀県・嬉野市に新設された「嬉野温泉駅」の駅前広場の一角。広場のどの方向からも視認できるこの敷地において、立方体のような箱型のボリュームを提案した。

このプロジェクトでは、嬉野温泉駅開業に合わせた明確な竣工時期が設定されていたが、コロナ禍の工事費の高騰や建材流通の不安定さに悩まされ、それらを解決する方法として工場や倉庫などで利用されるシステム建築を流用することを考えた。システム建築は、建材が規格化されることで比較的コストや納品時期が安定しており、無柱の大空間を作るのに適した方法である。クライアントの「観光客だけでなく地元の人も集まるような大らかな雰囲気と、地域の日常の延長にこの建物があって欲しい」という希望もあり、工場のような大きな無柱空間を確保することで、人やモノ、コトを受け入れられるような空間をつくりつつ、広場に面した建物として周囲の景色を感じられる、視線の抜けを意識した平面と外壁の構成を選択している。

この建物は、エリアで酪農を営むクライアントが運営する「MILKBREW COFFEE」のカフェを中心に、近隣で作られた食に関する様々な商材を扱う物販機能や、商品の開発・加工のためのラボ機能、そして地域の農産物を使ったフードを提供するためのキッチンを備えている。また、さまざまな生産者がこの場所に関わりを持てるよう、マーケットなどのイベントを行うことを前提に計画された。

室内はシンプルな正方形の平面の真ん中に、カフェやキッチン、ディスプレイやラボ機能を集めたボリュームをつくり、その周りを回遊できるようにしている。そして外壁低層部4面をガラスウィンドウにカスタムすることで、周囲の芝生広場と連動してマーケットを開いたり、室内の利用者が休憩しながらゆっくりと広場を眺めたり出来るような外との関係を生み出した。また、コアとなるボリュームや什器をはじめ、躯体となる鉄骨もライトグリーンでカラーを統一することにより、環境に馴染むような柔らかさや一体感が生まれることを目指した。

竣工後、この建物だけでなく駅前広場は温泉に訪れる観光客や地元の人々が自然と集まる空間となっている。新幹線駅ができたことは町にとって大きな変化ではあるが、誰もがふらっと訪れることができるみんなの場所ができたこともそれに匹敵する変化だ。この建築が駅や広場に訪れる人々の共通のランドマークとなり、活動に寄り添う場所となることを期待している。(小倉畑昂祐/OpenA)