博報堂ケトル オフィス

博報堂ケトル オフィス

時期:2022.10~2023.08

所在地:東京都港区赤坂

クライアント:博報堂ケトル

規模:延床面積(1F〜2F):約560㎡

用途:オフィス

基本・実施設計:馬場正尊+大橋一隆+平岩祐季+西川貴大+河崎帆高/Open A

電気設備設計:one and one 福島 颯太

機械設備設計:株式会社 NoMaDoS 高橋良輔

撮影:楠瀬友将

料亭をオープンに

港区赤坂にあるテナントビル内の料亭を、広告代理店のオフィスへとリノベーションしたプロジェクトである。

クライアントからの要望は、コロナ禍を経て社員が出社したくなる空間であり、オフィスに来ることでコミュニケーションを促進し、新しいアイデアが生まれるような場所にしたい、ということだった。

既存の建物は料亭という特性上、小割りの部屋が多く閉鎖的な空間であったが、使用されている材料が上質であることからも、これまでに要人らがこの場所で会合をしてきたであろう情景が浮かんだ。この落ち着いた雰囲気をいかすため、既存の仕上げをなるべく残しつつ、開放的なワークスペースを構築するという、ある意味ではパラドックスとも言えるデザインコンセプトで設計を行った。

1階には円形のエントランスラウンジを配置した。クライアントが創業時から象徴としている円卓から連想したものである。該当部分のみを躯体まで解体し、コーポレートカラーであるゴールド塗装の壁にて仕切り、円の外側は既存仕上げを残すことにより、料亭の雰囲気と新規のコントラストをくっきりと感じられるような空間とした。

2階には個人ブースや会議室などオフィス機能として必要なものを備えている。各客室や客室付きの手洗い、トイレなどの小割りの間取りを活用し、塩ビシートや亜鉛めっき鋼板などの違和感のある素材をあえて挿入しつつ、空間のトーンを整えた。サインや家具についても、元々使用されていた室名札や灰皿、障子をアップサイクルして製作することで、ところどころに料亭の記憶が残る空間を演出した。

これからこの場所で、どのようなイノベーションが起こっていくのか楽しみにしたいと思う。(西川貴大/Open A)