トライアルパーク蒲原
トライアルパーク蒲原
時期:2020.2~ 2022.6
所在地:静岡県静岡市清水区蒲原
クライアント:静岡市
規模:鉄骨造 地上1階 敷地面積 12599.54㎡ 延床面積 217.53㎡
用途:集会スペース、公衆トイレ、屋根付き広場
企画:Open A+公共R不動産
基本・実施設計/監理監修:Open A/馬場正尊+石母田諭+野上晴香
撮影:石母田諭
地形の建築化
トライアルパークは、国道バイパス下導線の道路付属物(道路休憩施設)、概念的には道路の1部であり、都市計画上の公園ではない。敷地はもともと建設発生土による土砂の受け入れ場になっていて、約1.25haの茫漠とした土地に、5メートルを超える高さの土砂が無造作に積まれた様は、まるで人工の地形のように見えた。
道の駅の予定地ではあるらしいが、まだ具体的な計画はない。この土地の可能性を顕在化させるために、仮設的公園(のようなもの)ができないか、というのが当初の相談だった。とはいえ、この巨大な土地でしっかりとした建築や外構を整備しようとすると、予算が限りなく膨らんでしまう。まさに荒地に立ちすくんでいた。
開き直って出てきたアイデアが、すでにある人工の地形自体を建築の一部として捉えること。要は土砂の受け入れ方を設計し、できた山を積極的に使ってみるのだ。
小高い山に囲まれた場所の中に、存在感の希薄なポリカーボネート板による半透明の空間をそっと置く。活用者によって任意にテントが張られ、日々変化を加えながら、場所の使い道を追求していく。ゆったりとした敷地だから可能な、おおらかなプログラム。こうなってくるともはや、土砂による地形も、誰かが建てたテントも、そのすべてが建築のようであり、公園的な空間が導いたビルディングタイプのようでもある。
社会実験を継続して行い続ける場所だから「トライアルパーク」と呼んでみた。3年間の暫定利用を経て、この場所にもっとも適したコンテンツが選択される。そのプロセスとしての公園である。(馬場正尊)
可能性をあぶり出すトライアルパーク
テストマーケティングの場として知られる静岡ならではの構想かもしれない。
当初、静岡市では道の駅構想が進んでいたが、COVID-19の影響もあり計画が頓挫していた。その状況下でいきなり大きな施設整備に着手するのではなく、比較的小さな投資で相応しい機能を試行しながら暫定形態で拠点をオープンさせる「トライアル・サウンディング」手法のもとに立ち上がったのがトライアルパーク構想だ。
厳密には道路法上の道路休憩施設に位置づけられるが、公園のように屋外での活動を主体とし、一部エリアを民間企業にも貸し出しながら、コンテナやテント、フードトラックといった仮設的な空間で全体の風景を整えていく。新設する建築もそれらに馴染むように、シンプルな3つのボリュームを並べ構成している。
同時にこのプロセスや風景のつくり方は、地元のプレイヤーの発掘や、集客ポテンシャルの顕在化といった狙いもあり、将来的な道の駅構想へと引き継がれることが想定されている。(石母田諭/Open A)
蒲原地区「トライアルパーク」プロジェクト(公共R不動産)
https://www.realpublicestate.jp/project/shizuoka