守口さんぽ

撮影:佐伯慎亮

撮影:佐伯慎亮

撮影:佐伯慎亮

守口さんぽ

時期:2022.10.15〜30

所在地:大阪府守口市

クライアント:守口市

共催:守口市駅北側エリアリノベーション社会実験実行委員会

担当:大我さやか、和久正義、阪上智昭/Open A

撮影:佐伯慎亮、和久正義、石母田諭

「守口さんぽ」は、大阪府守口市の道路・公共空間などを活用した社会実験。守口市駅北側エリアリノベーション戦略の一環であり、2021年11月の初回に続き、2022年10月に第二回を実施した。

背景には、子育て世代の人口流出、分譲マンションの増加、それに伴う地域コミュニティや地域への愛着の希薄化、空き家・空き店舗の増加などがある。全国でもいち早く保育料無償化に取り組んだことで若い子育て世代の流入人口は増加したものの、子どもの成長とともに子育て世代が市外に流出し、定住促進、まちのイメージ転換が課題となっていた。

そのため今回の社会実験では、守口市のまちの魅力づくりや回遊性の向上、地域への愛着・コミュニティ醸成を狙いとしている。また、今後整備される豊秀松月線の道路拡幅事業、文禄堤や東海道57次の宿場町の歴史的価値を今に残す旧徳永家住宅、そして守口市駅前の市営団地や駅前ビル、商店街の再生など駅前空間の新たな役割とデザインなど、今後の公共空間活用やエリアリノベーション戦略にフィードバックすることも目的としている。

社会実験の実施エリアは、以下の3エリア。各エリアごとに「食」「カルチャー」「クラフト」「親子で楽しめる遊び場」などを配置し、OpenAでは企画、出店者公募や調整、運営、効果検証を担った。

●豊秀松月線(道路予定地)

歩道区域に占用・滞在区画を想定し、露店やキッチンカーの出店、ストリートファ二チャーや駐輪場など、日常的なストリートの過ごし方を提案。道路を活用することで、ペット連れ、ベビーカーを押す子育て世代、そして高齢者や身体障がい者など、多様な人々がフラットに訪れ、滞在する空間が生まれた。出店者にとっては道路活用による売上向上、認知度向上、幅広い新規客の獲得、まちづくりにおいては日常的でローカルな賑わい創出につながった。

●桜町団地周辺

広場機能の導入可能性や、歩行者優先の回遊空間づくりの実験として、守口暮らしをもっと魅力的に彩る手づくりにこだわった食や雑貨、植物などが集まる守口暮らしのマーケットや、廃材をアップサイクルした遊具の子どもの遊び場を設置。広場から溢れるほどの子どもたちや親子で賑わい、不足している広場機能の需要や、周辺への波及効果などが明らかになった。

●旧徳永家住宅

守口市が取得した、文禄堤の歴史を誇る旧徳永家住宅。この伝統的な家屋を保存しながら、地域コミュニティの核となる場として活用するため、⺠間事業者等に貸し出すことを計画中。社会実験では、家具・植物・雑貨、ワイン、フィットネスなど目的性の高いポップアップショップを開くことで集客効果を促し、賑わいづくりやテストマーケティングを実施。

平日を含めて2週間実施し、13日間で11,500人の来場があった。各エリアへの回遊を促すためにスタンプラリーを実施したことで、認知度の薄い旧徳永家住宅などへの回遊効果も高く、未来の守口の日常風景をイメージさせ、まちに連帯感をもたらし、市民やプレイヤーがまちに関わる意欲を醸成できたように思う。

社会実験の実施以前にエリアリノベーション戦略を立案し、その戦略の仮説検証として社会実験を実施している。

戦略立案には、地元の飲食店、美容室などの個店、保育園、不動産、地銀、デベロッパーや鉄道会社など、15の多様なプレイヤーが集まる検討会を組成し、議論してきた。

これは、公民それぞれの主体が同じまちの将来イメージや方向性を目指して事業を推進していくための関係づくりであり、個店など守口にしかない魅力を生かしたまちづくりを進める上で、公と民、個人と組織を超えた相互理解を深め、主体的にまちと関わる動機をつくるためである。

社会実験とは、将来のイメージを市民や事業者と共有するための手段に過ぎない。重要なことは、今までまちづくりに参画できなかったプレイヤーや地元とのつながりが薄い企業と、意欲のある人や魅力的なコンテンツとの関係性をつくること。ドメイン(領域)の異なるプレイヤーの主体性や関係性ができれば、その後も自然とまちは動きはじめる。