SAGA FURUYU CAMP/旧富士小学校の再生

SAGA FURUYU CAMP/旧富士小学校の再生

時期:2020.4

所在地:佐賀県佐賀市

クライアント:佐賀市

規模:2,376㎡

用途:宿泊施設/サテライトオフィス/地域交流施設

企画・設計・監理・運営支援:馬場正尊・加藤優一/Open A+OSTR

撮影:阿野太一

10年程度放置されていた小学校を、宿泊施設・サテライトオフィス・地域交流施設などの複合施設にリノベーション/用途変更を行い再生した。

地方都市の廃校は、活用の運営主体がいないため、放置されている場合が多い。この富士小学校も、長年放置され続け、エリアの風景にマイナスのイメージを与えていた。

本プロジェクトでは、その課題を突破する方法として、「企画・設計」に加え、「運営」をセットにしたプロポーザルが行われた。条件の良いところであれば、PFI(Private Finance Initiative)も選択肢に上がるが、今回の事業規模では、大手のゼネコンが参画する可能性も薄く、「設計」と「運営」というソフトだけを切り離した形での募集となったのだ。そのおかげで、運営を担う地元企業と僕らのような小さな設計事務所が組んで、クリエイティビティやデザイン、機動力で勝負して再生することが可能となった。

この手法は日本中の地方都市の廃校活用に展開できる可能性が高い。地域の価値を上げるために、建設費は行政が負担、大手のゼネコンではなく地元の建設会社でも参加できるようなスキームにすることで地域経済にも貢献でき、地元の企業が運営を行うことにより、既存産業との連携も進む。プロセスとして、新たなモデルになるのではないかと考える。

デザイン要素の検討に当たっては、エリアの価値と原風景の顕在化に軸を置いた。佐賀県は人工林率が日本一であり、木材の活用が求められている地域であるが、このエリアは県内でも有数の木材の産地だ。そこで、地元の企業と協同して地域産材を積極的に活用することにした。むき出しのコンクリートと暖かな木材のコントラストで全体のトーンを決め、建物自体がエリアの価値を表現するショールームのような仕掛けにしている。山と川に囲まれた敷地には、大きな樹木や岩が点在しており、それもひとつの原風景になっている。家具やサインは、量感のあるデザインとし、建築内部だけでなく敷地内にも散りばめることで、人工と自然、古いものと新しいものをつなげる要素として機能させている。

また、地域の方が訪れた際、面影を感じられるように、かつての学校のスケールや素材を細かく残している。新しい用途を実現するために必要な改修箇所においても、可能な限り既存の素材を活かすとともに、巾木・建具・建具枠などのチリや寸法を既存の学校のスケールに合わせてひとつひとつ決定していった。

シンプルなリノベーションだが、そこに楽しげなアクセントとしてグラフィックデザインを有効に用いた。グラフィックデザインを一緒に担当してくれたのがUMA/design farm。彼等のデザインは、グラフィックと言うよりも、それ自体がプロダクトや造形物のように振る舞ってくれる。僕らはそれを「オブジェクティブグラフィック」と読んでいる。銀座で行われたUMAの展覧会でも、グラフィックの枠を超えた展開が感じ取れる。(馬場正尊+加藤優一)

公共R不動産での取材記事:
温泉街の廃校をスポーツ合宿施設へ。新たなプロポーザルの仕組みで地域の拠点づくりを目指す「SAGA FURYU CAMP」(前編)

https://www.realpublicestate.jp/post/saga-furyu-camp/

事業者のクリエイティビティを発揮しやすい廃校活用スキームとは。佐賀市「SAGA FURYU CAMP」(前編)
https://www.realpublicestate.jp/post/saga-furyu-camp2/