=ODEN/静岡のコワーキング・シェアオフィス
=ODEN/静岡のコワーキング・シェアオフィス
時期:2020.10
所在地:静岡県静岡市
クライアント:静岡鉄道株式会社
規模:419.27㎡
用途:コワーキング・シェアオフィス
企画・設計・監理:平岩祐季+塩津友理+瀧下まり/Open A
撮影:平岩祐季/OpenA
静岡鉄道の始発駅である新静岡駅から徒歩3分。街角に立つビルの1〜2階に、新たな交流やビジネスが生まれる地域のビジネスの拠点として、静鉄鉄道が運営するコワーキング・シェアオフィスを設計した。
施設名称は「=ODEN(イコールおでん)」。いろんな具材の出汁が継ぎ足され、真っ黒な汁が名物の「静岡おでん」をアナロジーに、ここで働く人たちの個性を、自分たちの手で継ぎ足していきながら空間をアップデートしていくオフィス、そして地域からも愛される拠点として成長していきたい、そんな静岡鉄道の熱い思いが込められている。
設計プロセスには、静岡鉄道の社員たちを中心に、働く場所にどんな機能や仕掛けがあったら交流が生まれるのか、ワークショップ形式でアイデアを出し合う場を設けた。設計者と運営メンバー、そして「=ODEN(イコールおでん)」を利用する人たちが一丸となってプロジェクトを進めていく体制こそが、今回のオフィス空間には必要不可欠であったと感じる。
ふらっと立ち寄って仕事の話や地域の相談ができる、まるでおでん屋台のような交流の場となるよう、働く人たちが自由に使えるキッチンカウンターを1階の角地に向けて配置。ここでは、沿線地域のエリア活性化を目的として発足した静岡鉄道の「プロジェクト11(イレブン)」メンバーが運営スタッフとして常駐しており、利用者同士のマッチングやコミュニケーションのハブとしての役割を果たしている。
段差で緩やかに仕切られているコワーキングスペースは、働く場所を自分たちで作ろうというアイデアから、静岡鉄道社員が自分たちで組み立て・塗装をしたDIY家具が並び、ミーティングはもちろん、イベント利用もできるような可変的な空間になっている。ディスプレイする本によってフロントの印象が変わる受付カウンターや、植物・サイン・展示作品などをひっかけられるパイプは、この場所に集まる人の個性を引き出す仕掛けとしてちりばめている。
2階にはフリーランスや地元企業のサテライトオフィス利用を想定したブース席、モードを切り替えて集中したい時に使用できるミーティングルームを設置。
そして、1〜2階には静岡鉄道で実際に使用していた車両の取っ手や運転台の椅子、座席シートを再利用し、静岡鉄道のアイデンティティとして、オフィスを彩っている。
働く場所を自分で選べる時代にシフトしている今、鉄道沿線近くの立地を生かしたコワーキング・シェアオフィスのケーススタディとして、また、静岡鉄道の沿線エリアを活性化するスタート地点として、今後ここで働く人たちがどんな味の出汁をこの場所に継ぎ足していってくれるのか楽しみだ。(瀧下まり)