堀川団地再生
堀川団地再生
時期:2014.3
所在地:京都市上京区
規模:RC造地上3階のうち2階の3室、3階の1室
用途:住宅
敷地面積:73.52㎡
建築面積 62.10㎡
延床面積 387.86㎡
掘川団地は.戦後まもない1950年代に建設された日本で愚も古い鉄筋コンクリート造の下駄履き住宅のひとつである。コンクリートの箱の中に京都の町家がすっぽり入ったかのような構造をしていた。内装は木と土壁としっくいでつくられ、土壁の中からは竹木舞がでてきた。そこから京都の職人たちが戸惑いながらも鉄筋コンクリー卜に向き合った様子と、建築lこ用いられる材料の変換点が伝わってくるようだ。この標本のような空間にどう向き合うかがデザインの起点となった。
実験住居として、4つの部屋が用意された。その既存部分を残す割合を4段階に設定し面影度と呼んだ。もっとも面影が残っている部屋は、既存の部材をできるだけ使い、そとにキッチンやシャワールームなど生活に必要主主最小限の機能を挿入した。一方、面影度が最も小さな部屋では欄間・柱を切り取ったように残し、残りは鉄筋コンクリートの躯体を現しにしただけだ。それはコンクリートの箱の中にぽんと茶室を置いたような空間となった。
私たちが行ったのはこのシンプルな操作である。この実験居住の新たな居住者向けに内覧会を行い、そこでこの団地と空間を使いとなす居住者を募集した。そしてこの空間をどう住みとなすかを提案してもらい、私たちはそれを適合させるように、基本設計は変えないままディテールや仕上げを調整した。
既存建築の状況を軍大限尊重し、歴史的な意向と向き合いながら、新しい居住者のイメージや想像力を受け止めることに注力した。現在、この住戸には.江戸眼鏡の職人、 陶芸家、インテリアデザイナー、 コミユ二ティを繋ぐコーディネーターの4人が住んでいる。
職人の町・西陣の東端に位置し、1 階に商店が並ぶ下駄履き住居である堀川団地は、住まいと仕事場と商いが混在する、かつての京町家が立体的に積み重なったような住居群に似つかわしいと考えていた。この4人が、新しい堀川団地の実験的な居住者である。
<『新建築』2015年2月号より抜粋>