泊まれる公園 INN THE PARK

泊まれる公園 INN THE PARK

時期:2017.01

所在地:静岡県沼津市足高

クライアント:株式会社インザパーク

規模:約9000㎡

用途:簡易宿所

企画・設計・運営:大橋一隆

新しい宿泊体験を実現するために


沼津市北部に位置する愛鷹広域公園。その中にある旧沼津市少年自然の家では、かつて小中学生による林間学校などが行われていた。少子化の影響や施設の老朽化に伴い閉鎖が決定し、民間事業者の公募型プロポーザルに至ったのが2016年7月のこと。

そこで提案をしたのが「泊まれる公園 INN THE PARK」である。本計画では、県内外から人々が訪れる新しい宿泊施設を目指し、大きく2つのことを行っている。既存建物の魅力を活かしながら改修すること。そして、施設が公園と一体となるような新たな仕掛けを設けることだ。

既存建物については、かつて大勢の子供達でひしめきあっていた高密度な空間を、ゆったりと過ごせる空間に変換する。それだけで十分であった。二段ベッドが並び、1室に10人以上が滞在していた宿泊棟は、大人2人が快適に泊まれる客室に、そして100人を越える子どもたちが一堂に会していた食堂は、宿泊者がゆったりと過ごせるサロン&カフェへと姿を変えた。

改修は、仕上げのやりかえを一部行った程度であり、限りなくそのままの状態に近い。誰しもが一度は経験したことのある林間学校。その記憶を思い出しながら、全く異なる贅沢な空間体験ができるのは、この施設ならではの魅力だろう。

もうひとつ、隣接する芝生広場を中心とした公園との新たな関係性をつくるために考えたのが、違和感のある風景をつくること。それを実現するために、森のなかにジオデシック構造を利用した球体状のテントを浮かせた。自然の緑の中に、白い異質な物体が挿入されている風景は、SFの世界に入り込んだような不思議な感覚に陥る。

公園という身近で日常的な場所のはずなのに、非日常の世界が広がっていること。さらにそこに宿泊できることは、他にはない特別な体験だ。一方で地元の人にとっては、日常的でより魅力的な公園となるべく、カフェを併設し、イベントなども定期的に行っている。

日常と非日常が交じり合う新しい公園を目指して、今後も改修を行っていく予定である。

(文=大橋一隆)

<『新建築』2018年05月号より抜粋>