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観月橋団地再生計画


時期:2012.4
所在地:京都府京都市伏見区
クライアント:都市再生機構
規模:RC造5階建て
建築面積:3,798㎡(A、Bゾーン合計)
延床面積:21,869㎡(A、Bゾーン合計)
用途:共同住宅


このプロジェクトのミッションは、団地フォーマットの再構築と、新しい住み手に空間を届けることだ。団地再生を行う作業には. 50年目の設計思想と対話をしているような気持ちになるこのプロジェクトを手掛けるようになって,たくさんの団地を見て回った。もちろん基本的な仕様は類似しているが、所々に担当設計者の感性や工夫、そして時代性が垣間見える。

住設機器の機能性やスケールには大きな誤差が生じている。 60年代団地フォーマットには冷蔵庫や洗濯機置き場などが存在しない。日本人の平均身長が約10cm 伸びているからスケーリングにずれが生じている。室内に入ると自分が大きく感じる。それらを現代に合わせ矯正し、小さいことを活かしてこぢんまりまとめる。

団地の間取りと向き合うことで、家族形式の変化を改めて感じることになった。端にあったキッチンがコミュニケーションの中心に移動し、水回りの比率が増大、プライバシーの確保がポイントになったプランは家族の様子を浮き彫りにする。
変わらないのは東西に抜ける窓の開放感や風の抜け方、近隣との近くもなく遠くもない絶妙な距離感。これらは団地フォーマットの普遍的な価値だ。時が周回して、コミュニティやエコロジーに新たな役割が期待されようとしている今、この開放感と距離感に再び意味を帯びさせた。

設計や工事を進めるプロセスも、団地再生ならでは。追い出すわけにはいかないので、既存住人はそのままで、虫食い状に空いた部屋をバラバラのタイミングで、ひとつすっ改修していく。

このプロジェクトは今後の団地再生のプロトタイプを提示することだったので、他への展開・援用可能性が重視された。改装する住戸数が多いので、大きめのプロダクトをつくる感覚に近いかもしれない。

工事費が家賃にそのまま跳ね返る。家賃を安く抑えるためにディテール、部材やパーツの標準化や汎用化を徹底的に図った。
もうひとつのミッションは、新しく団地に住む人びとの像を再び提示すること。高鈴化が進む団地に、世代の混在を進める住戸構成とした。エレベーターがないから、4、5階に高齢者はきつい。一方、若い単身者は眺めがよい方がよいだろう。世代によって団地の魅力は角度が違う。それをプランで顕在化させ、しっかり社会に伝え直すことも必要だ。偏りなくさまざまな世代が交代しながら流動的に住む状況をつくることが、巨大UR賃貸団地群にとっては大切なことだと考えた。

空間だけでは完結し得ない、人びとの営みに対してどこまで設計者は貢献できるか、それを問われているブロジェクトでもあると思う。並行してつくった「団地R不動産J のようなメディアも具体策のひとつだ。その時代の生活のリアリティと向き合ってつくること。これらは50年前に団地をつくった人びとと、あまり変わらないのかもしれない。それは時が経過した団地からもしっかり伝わってくる。半世紀前の設計者たちから、躯体というバトンを渡されたような感覚でこの仕事を進めた。

<新建築2012年2月号より抜粋>